「あー、心菜すごい冷えてる」
「えっ、そうかな……」
確かに、少し寒い。
ブレザーを教室に置いてきたのは失敗だったかもしれない。
「これかけて」
そのとき、背中に感じていた冷たい風が遮断された。
それは、怜央くんが着ていたブレザーだった。
「えっ、怜央くんだって寒いでしょっ……」
驚いて目を見張った先には、ブレザーを脱いでシャツ1枚になった彼。
胸元は大きく空いていて、肌が透けて見えてドキッとした。
「俺は平気だよ。中入ろうって言ったのも、心菜が寒そうにしてるからさ。ほっそいし、熱蓄えらんないんだろ?」
「……ありがとう」
あたしには大きすぎる、ぶかぶかのブレザー。
怜央くんの温もりにすっぽり包まれているみたいで、ものすごく幸せ。
怜央くんはパンの包みをクシャクシャと丸めて、袋にしまう。



