怜央くんの彼女でいることに、引け目を感じているなんて知られたくない。


こんな自信のない彼女、嫌じゃないかと不安になる。


そんなあたしに、底抜けに明るい声が聞こえてきた。



「あーわかった。心菜は俺とふたりっきりがいいんだろう。心菜のえっちー」



そして、ツン……と、怜央くんがあたしの鼻の頭を人差し指で弾いたのだ。



「えっ……」



えっち……!?って。


やだっ。


とんでもない発言に、あたふたするあたし。



「じゃあいいよ。心菜とこうしてればあったかいし」



突然あたしを後ろから抱きすくめる怜央くん。


怜央くんの髪の毛があたしの頬にあたる。心拍数が上昇する。


けれど、その温かさに安心して瞳を閉じた。


怜央くんの香りと温もりに包まれながら思う。


……もしかして、なにか察してくれた?


見当違いの彼のセリフは、重い空気を軽くするため。


陰口はきっと気付かれてないだろうけど、あたしの想いを汲んでくれたのかな。


だとしたら、なんて優しい人……。