「えっ?どこどこ?」
「あ……もう行っちゃったけど」
「やだー、心菜ってばモテモテじゃん!」
さっきまでの暗い空気がパッと変わる。
まるで、停電が開けたように。
「そ、そんなんじゃないし!」
本当にそんなつもりで言ったんじゃないけれど、凪咲ちゃんにいつもの元気が戻ってきて嬉しくなる。
「怜央くんとつき合ってから、ますます可愛くなったもんね。心菜も隅におけないな~」
「そんなことないってば!」
怜央くんとつき合ったからあたしがモテ始めるとか、そんなのあるわけない。
でも……彼は間違いなくあたしを見ていた気がする。
好意を持ったような視線かと言えばむしろその逆。
冷たく、じとっと視線を送るような。
どこかで会ったような気がするんだけれど。どこだろう。
同じ学校の生徒なら見たことがあって当然だけれど、なんとなく学校じゃないような気もして。
日常の中の何気ないたった一コマ。
なのに、どうしてかこのことが胸の中でずっとひっかかっていた。



