怜央くんとはまだ喧嘩なんてしてないけれど、それはまだお互いに遠慮があるからかもしれない。
仲良くなれば、そういうことも出てくるかもしれない。
喧嘩はしたくないけど、それも仲のいい証拠と言えば、そうなんだけれど。
そんなことを考えながら歩いていると、ふいに視線を感じた。
パッと目を向けると、柱の陰からあたしをじっと見つめている男の子と目が合った。
なぜか引き寄せられるその瞳に、足を止めた。
少し幼さの残る黒髪の男の子。初めて見る顔。
……何年生だろう。
彼は、あたしと視線が合ったことに気づくとそのまま身をひるがえしてしまった。
「心菜、どうしたの?」
足を止めたあたしを、凪咲ちゃんが不審そうに振り返る。
「あ、……今そこにいた男子があたしのことじっと見てて……」
あれは、間違いなくあたしを見ていたと思う。



