少し困惑するあたしに、凪咲ちゃんは目を伏せた。
「あ、ごめん……ちょっとね……」
「大丈夫……?」
喧嘩したのかな……。
「あたしたちも急がないと」
次の時間は移動教室で、そう促す凪咲ちゃん。
「うん」
あたしは教室の中から教科書を急いで取ってきて、歩き出した凪咲ちゃんに肩を並べる。
唇をかみしめたまま一言もしゃべらない凪咲ちゃん。
一体、何があったんだろう。
カップルの喧嘩といえば……まさか、大和くんが浮気?
いやいや、ない。そんなこと絶対あり得ない。凪咲ちゃんという素敵な彼女がいて浮気なんてしてたらバチ当たりだ。
それでも所詮、他人同士。
上手くいっているように見えるカップルでも、傍目ではわからない何かがあったりするんだろうか。



