モヤモヤしたまま迎えたその日の6時間目の前、トイレから教室に戻ったあたしの耳に届いたのは、激しい女の子の声だった。



「ねえ、待ってってば!」



え、なんだろう。

続けて男の子の声も。



「だからなんでもねえって」


「じゃあちゃんと説明してよ!」



入っていいのか、ためらってしまう。


どうしようかとその場で足踏みをしていると。


教室から出てきたのは大和くんでびっくりする。


大和くんは「おっ」というように眉毛を少し上げると、「ほら、早く行かねえと遅れるぞ」と中へ向かって声をかけ、教科書を手にそのまま廊下を歩いて行った。


それを追いかけるように出てきたのは、凪咲ちゃんだった。



「えっ、どうしたの?」



まさか、今のやり取りが凪咲ちゃんと大和くんだったなんて。


だって、凪咲ちゃんのそんな声は聞いたことないから。


ふたりはいつだってラブラブで、喧嘩する所なんて想像もできない。