「そんなことを俺に言ってくる暇があったら、練習して技術をもっと磨け」
「結果論はそうだとしても、なんで急にやり方を───」
「俺のやり方についてこれないヤツは、サッカー部にいらないぞ」
「……っ」
顧問はそう言い放つと、次の授業があるのかテキストを手に、怜央くんの前から足早に去っていった。
顔を歪めたまま、その後ろ姿をじっと見つめている怜央くん。
あたしは……見つからないようにそっと職員室を出た。
胸が痛かった。
怜央くんは、これまでどんな気持ちを抱えていたんだろう。
怜央くんは自分の力を過信したり、傲慢になる人じゃない。
それでも、いつまでもスタメン落ちが続けばその理由を問いたくなるのもわかる。
今の顧問の態度は誠実じゃない。
答えを求めている部員に、あの返答はないよ……。



