話している相手は、確かサッカー部の顧問の先生。


どうしたんだろう……そう思ったそのとき。



「ちゃんと理由を言ってください!」



声が張り上げられた。


まぎれもなく、怜央くんの口から……。


慌ただしい朝の職員室の中でも、それはよく響いた。



「どうして俺をスタメンから外すんですか?」



真剣に、でも少し焦った様子の怜央くんは、間髪入れずに顧問に詰め寄る。


あたしはその場から動けなくなった。


いつも明るい怜央くんの、こんな声を聞いたことがなかったから。



「まあまあ、他のヤツにもチャンスを与えたいってことだよ」



あしらうように流す顧問に、納得できないという顔で食って掛かる。



「ずっとじゃないですか。しかも昨日の試合、大事な大一番ってこと監督だってわかってましたよね?」


「でも勝ったんだからいいじゃないか」



そう言うと、顧問はなだめるようにポンポンと怜央くんの肩を叩く。