それから数週間が過ぎた。
怜央くんが部活の話をしたがらないから、あたしも敢えて触れることもなくその後も試合を見に行くことはなかった。
そのたびに凪咲ちゃんから『昨日も怜央くん試合に出てなかった……』そう言われ、なんだかあたしは胸が痛かった。
スランプに陥ることもあるだろうし。頑張ったって、うまく行かない時もある。
それでも、あたしの前ではそんな素振りをいっさい見せない。
だからあたしも怜央くんの前では何も知らないふりをして、笑顔だけは絶やさないようにしていた。
そんなある朝、教科係で職員室に行った時のことだった。
たまたま同じ職員室内にいる怜央くんの姿を見つけて胸が弾む。
こんなところで会えるなんて。
用事を済ませて、怜央くんを目で追ったあたしの心臓が鈍く音を立てた。
怜央くんの顔が険しくゆがんでいたから。



