「ブレザーにしがみついといて」
それはさすがに無理です。
男の子に密着するなんてとんでもない。
「そ、それはいいです。そんなことできないですっ」
大げさに手を振ると、彼は言いにくそうに言った。
「あー……。てか、そうしてもらわないと落っこちちゃうからさ」
逆に困る、とでもいうように。
……あ、なるほど。
あたしにはつかまるところがない。
胸キュン青春シチュエーションでもよく使う自転車のふたり乗り。
物語のヒロインには何度もさせているのに、実際やるとなったら緊張半端ないことを知った。
もたもたしていると、「ごめんね」そう言って、彼の方からあたしの手を取り腰に回させた。



