藤谷さんは、すみれちゃんを思いやって言っているのだろう。


失恋してしまった友達の無念を、こうやって言うことで少しでも晴らしてあげようと。


その気持ちは分からなくもない。



「ほんとにいいんだって。心菜ちゃんごめんね」


「あ……」



あたしに向き直ったすみれちゃんの目は優しくて。


余計に胸が痛くなる。


すみれちゃんがそう言うと、体育祭のときのように藤谷さんは苦い顔をしたまま身をひるがえして行ってしまった。


軽くうなずいたすみれちゃんにあたしも小さくうなずき、去っていく彼女を見送った。