「きゃっ……」
誰かと肩がおもいきりぶつかってしまった。
「すみません」
踏んだり蹴ったりとはこのことだ。よそ見なんかしているから。
慌てて頭を下げた相手は、同い年くらいの男の子。
迷惑そうに眉をしかめてあたしをじっと見つめていた。
「……っ」
確かによそ見をしていたあたしに非はあるし、なにも言えないけれど。
そんな睨むようにしなくても……しかも、その瞳がなんだか冷たくて背中がゾクっとした。
怜央くんは、お財布からお金を取り出しているところで、今のは見ていなかった様子。
あたしはもう一度軽く頭を下げると、怜央くんの隣まで小走りしていった。



