耳に届いたのは、周りの音を一瞬にして遮断してしまうような言葉だった。
……え?
怜央くんの好きな人が心菜って……あたし……?
これは小説の中の妄想?
いまここにいるのは、小説のヒロインとヒーローなの……?
この瞬間が、現実なのか分からなくなってしまう。
小さく腕をつねってみれば、感じる痛み。
「俺は、心菜が好きだ」
そんな中、とても真剣な瞳で繰り返し告げられる。
その顔は、少し赤らんでいるように見えた。
……っ。
嘘……でしょ?
「じゃ、じゃあ、あのとき……すみれちゃんに告白されたとき、怜央くん『すごい嬉しい』って」
それで、あたしはOKしたんだと思った。
「あー……確かに言ったかも。好きになってもらえるって、素直に嬉しいし、相手も一生懸命気持ち伝えてくれてるのがわかるからさ」



