「心菜もたまには見に来てくれよ、なんてなっ」
ふっとはにかむ顔が少し照れたように見えた。
……どうして?
どうしてあたしにそんなこと言うの?
嬉しいけど……胸が痛くて……下を向いてしまう。
怜央くんは、期待させるようなことばかり言う。
完璧な彼のたったひとつ欠点をあげるとしたら、無自覚タラシなところだ。
しばらく沈黙が続いた。
すると目線の先が開け、駅がもうすぐそこまで来ていることを知った。
明るいネオン。通りすぎる車。点滅する信号。
息苦しい世界から解放された気がして、少しホッとする。
「……心菜さ」
そのタイミングで思い詰めたような声で怜央くんが口を開くから、ビクッと肩が上がった。
「なにか悩んでることある?」
続けてそんなことを言われ、怜央くんの顔を見つめてハッと息をのんだ。
当たり、だけど。
……悩みの種の張本人に心配されるなんて、情けないな……。



