ひとりになったところでスマホを取りだして、「木いちご」のサイトにログインした。
自分の小説を読み返してみる。
「ふはは……」
乾いた声が、闇夜に紛れる。
この都合のいい展開は、すべてあたしと怜央くんを妄想して綴ったもの。
あたしはすべて自分の都合のいいように書いてたけれど……。
そんなにうまく行くはずなんてないんだ。
所詮これは物語の中のふたりであって、あたしと怜央くんではない。
こんなの書かなければよかった。
みじめになるだけだから。
この先なんて、もう書けそうにない。
あたしと怜央くんをモデルにしたハッピーエンドの物語なんて……。
楽しんで書いていた妄想小説に、実際の人物を当てはめるなんて邪道だったんだ。
読むのだってつらい。
いっそのこと、消してしまおうか。
……そうしよう。



