「よしっ、じゃあ決まりな!」
「……うん」
これで怜央くんの要件は済んだと思ったのに、彼はまだあたしを見たまま。
……なにか……?
「心菜、最近元気なくねえか?どうかした?」
さらにグッと顔を近づけられて、体が思わず固まった。
……嘘。
普通にしているつもりだったのに、気づかれていたなんて。
……気づいてくれてたんだ。
嬉しいような、そうじゃないような。複雑な心境。
「まぁ、うまい肉腹いっぱい食って、ぱーっと発散しようぜ!」
「……これでもあたし、一応ダイエット中なんですけど」
「はあ?それ以上どこを痩せる必要があんの?」
「あるよいっぱい!見えないとこ」
自分の体を抱えるようにぎゅっとすると。
「そーゆー言い方すると想像しちゃうんですけど?」
「……っ!」
整った顔でそんなこと言うなんて反則すぎる。
っていうか、そんな発言をすみれちゃんに聞かれてもいいの?
「ははっ、心菜っておもしれーの」
あたしの心配をよそに、イタズラに笑う怜央くんはやっぱり罪深い。
あたしが今、どんな想いでいるかなんて、まったく気づいてないんだろうから……。



