心当たりのある声だったから。
……もしかして、すみれちゃん?
ううん。もしかしてじゃなくて、可愛らしく甘くて細いこの声はすみれちゃんで間違いない。
一瞬にして、焦燥感に襲われる。
先を越されてしまった。
絶対に言わせてはいけない相手に、先に言わせてしまったと。
言ったところで自分にチャンスがあるとは思っていないけど、それでも一番言わせては駄目な相手だと本能で思っていたから。
そうだったんだ……すみれちゃん、そんなに前から怜央くんを。
あたしが知るよりもずっと、前から。
「あたしと、つき合ってください……」
絶体絶命だ。
胸の前でこぶしを作り、きつく目を閉じた。
空気がピンと張り詰めるかのよう。
まとう空気は冷たく感じ、呼吸するのさえ忘れ、次の言葉に耳を澄ませた。
沈黙が続く。
それはものすごく長い時間に思えた。
聞こえた怜央くんの第一声は。
「すげえ……嬉しい」
──ズキンッ。



