先輩が名古屋の大学から、招かれる形で、推薦入学が決まったことは、クラスのみんなの大きな驚きと喜びを呼んだ。


「先輩、おめでとうございます。」


「ありがとうな。とりあえず、これで野球からまだ、離れなくてもよさそうだ。」


「それが何よりよかったです。」


沖田くんや聡志がまるで、自分のことのように、喜んでるのが、印象的だった。


「今日は、先輩の合格祝いやろうぜ。」


「練習はどうするんだよ。」


「そんなのまだ先じゃないか、今日は騒ごうぜ。」


ノリノリの沖田くんに、聡志はやや圧され気味。そんな2人を笑顔で見ている先輩。野球部って、本当にいい雰囲気でやってたんだなぁって、改めて思わされる。


「ねぇ悠、沖田くん達、あんなこと言ってるけど、いいの?」


その様子を見ていた加奈が、悠に聞く。


「うん。徹くんとは、カラオケボックスに行こうか、なんて話をしてたんだけど、せっかく沖田くん達がああ言ってくれてるんだから、今日は彼らと楽しめば。」


「でもさ。」


モノわかりのいいことを言う悠に、心配そうな加奈に対して


「カラオケ、いいじゃん。」


と言うと、私は、先輩達の方に向かう。


「ちょっと、由夏!」


慌てて加奈が、声を掛けてくるけど


「沖田くん、私達も一緒に行きたい。お祝いのカラオケパーティにしようよ。」


「えっ、岩武さん達も来てくれるの?」


「うん、いいでしょ?」


「もちろん。そうしましょうよ、先輩。水木さんとの愛のデュエット、聞かせて下さい。」


「う、うん・・・。」


少々困惑気味の先輩は、悠に視線を送るけど、ニコニコしながら肯いてみせる悠。さすが、我が親友!


「じゃ、それで頼むよ。」


「はい。」


「よし、決まりだ。」


盛り上がる私と沖田くんだけど


「おい、ちょっと待てよ。」


聡志が何か言いたそうに、口をはさみかけて来たので


「なに、あんた、長谷川さんと約束でも、あるの?」


「なっ・・・。」


私のツッコミに、絶句する聡志。


「じゃ、みなさん、よろしく。」


「OK!」


ハイテンションの私と沖田くん、そんな私達に、やや苦笑いの悠と先輩、そしてやや引き気味の加奈と聡志・・・なんとも不思議な6人組が結成された。