「まあまあそんなこと言わずに。このクローゼット姉ちゃんのだからさ。


色々入ってるから見られたら俺怒られるんだよ」



そんなことを言いつつも、クローゼットを漁る。



仕方なく俺は結衣の部屋を出た。



明かりのついた部屋で結衣と未央は楽しそうにお喋りしている。



少しだけ、チャンスを逃したことを残念に思う。



なんか、咲久の策略にまんまと引っかかった。



名前だけ言わせて、それ以上のことはさせてもらえない。



まぁ、それが弟心なんだろうけど。




俺は、結衣の隣に座ると、参考書を開いた。



「礼央くん礼央くん」



机に肘をついて気怠げに参考書を見つめていると、結衣が嬉しそうに話しかけてきた。



「なに?」



「明日の数学のテスト範囲、どこだっけ?」



「35ページから、68ページまで」



「ありがとー」




結衣はそれだけ言うと、教科書を開いてペラペラとめくり始めた。