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久しぶりに、ただの“夢”を見た。


それは憑霊に追われる夢でも、明晰夢でもない。


目が覚めるまで、その体験が現実のものでないと疑うこともなかった。


とにかく、よくあるただの夢だ。


夢の中であたしは、四歳の小さな七海になっていた。


その頃、よくあたしの家に出入りして、小さかったあたしのお世話してくれていた喜嶋(キシマ)さんという人がいた。いわゆる家政婦さんだ。


夢の中で、喜嶋さんは太った体を揺らしながら、作りたての夕飯をリビングに運んでいた。


あたしは手伝う素振りもなく、テレビに釘付けになっていた。


放送していたのは、そのとき流行っていた医療もののドラマだ。


内容もよく分かってないくせに、わくわくしながら見ていると、テレビの中に、白衣を着たお母さんが登場した。


「きぃちゃん!! お母さん出たよ!!」


あたしは喜嶋さんに言った。


「あら本当だ! お母さん、今度はお医者さんだね!」


喜嶋さんはテーブルにハムとチーズを置き、あたしに近づいて言った。


「違うよ、”チョイさん”だよ!」


舌足らずにあたしが言うと、喜嶋さんはニコッと笑い、


「そうね。女医さん。かっこいいね!」


とあたしの肩に手を置いて言った。


「うん!
テレビのお母さん、マジかっこいい!」


あたしは大きくうなずいて笑った。


「…………」


そんなあたしの笑顔を見て、喜嶋さんの表情が微かに曇ったのを、あたしは子供ながらに感じ取った。