「紅亜様の居所は常に小路に把握されている。娘を護るため、紅亜様は今、共には暮らしていないようだが……。その日、娘に逢って来ようと思う」

「それは小路(こうじ)の問題だから、御門(みかど)の俺が口を出すのも難だが……真紅嬢だったか? 出自は知らないんだろう?」

「父君との一件で、桜木から絶縁されているからな。紅亜様は直系長姫(ちょっけいちょうき)でありながら廃嫡(はいちゃく)された身だ。知らされてもいないし、陰陽師や退鬼師としての修業なんざもやってねえみたいだ」

黒はぼやくように頭を掻いた。一房だけ銀が混じった黒い前髪。