「………」
 

男の人はどうしたものかとでも考えているのか、難しい顔をしている。


私は、今は自分の身を護るのに必死だ。なんだか流れとしてはこの男の人に助けられたみたいだけど、状況に頭が追いつかない。


「こっち来い」


「………」
 

私は返事が出来ない。
 

じーっと睨んでいると、男の人は何かを諦めたように、ふっと口の端をゆるめて立ち上がり私に歩み寄った。


私はびくりと身体を震わせたけど、咄嗟に動けなかった。まだ目の前がぐらぐらする……。


「元気なのはいいけど、無理はするなよ」
 

……限界だ。男の人が差し出した腕に、私は倒れこんだ。


「すぐに戻してやるから。……少し待ってろよ」
 

少しだけ待っていろ。遠のく私の意識に、言葉がかけられた。


「生きろよ」
 

そして、首筋に牙を当てた。