「いらっしゃいませっ」

ママに連れられてやってきたのは、住宅街も離れた、少し山の中へ入りかけるような場所だった。

近いとは言えないけど、歩ける距離に黒藤さんも白ちゃんもいたのか。

生垣で囲まれた敷地の間から見えた入り口辺りから、大学生風の女性が私たちに手を振っていた。

初めて見る人だ。

ショートパンツにオフショルダーのトップス、靴はスニーカー。

動きやすさ重視のような恰好だけど、肩より長い髪はそのまま垂らしている。

二十歳前後に見えるけど化粧っ気はない。

素で綺麗な人だ。

ママは黒藤さんに呼ばれていると言っていたから、この人は影小路の人だろうか。