「俺は……見鬼ではないから。涙雨のことも、黒い小鳥にしか見えないし、声も聞こえないんだ」
淋しそうな桜城くん。黎の言っていた通りなんだ……。
「涙雨」
次に聞こえたのは少し冷えた声音だった。
凛と劈(つんざ)くように呼ばれて、るうちゃんは羽を羽ばたかせた。
『白(しろ)のひ
「涙雨? 燃やすぞ?」
『失礼した、白(しろ)の若君』
桜城くんには聞こえないらしい声で、るうちゃんが即座に謝った。
か、カゲキなこと言う人だなあ……。
私はまじまじと、呼んできた青年を見遣る。
あれ、昨日の黒藤さんと同じ制服だ。



