「嫌いではないよ。嫌いだったら家に帰れなんて言わないよ。桜城の跡取りには、兄貴のが相応しいから」
これは、黎が言っていたように桜城くんのお母さん、弥生さんの影響なのだろうか。
「兄貴はね〃桜城〃として優秀なんだ。小さい頃からそれを目の当たりにして、俺は兄貴を助ける立場になりたいって思ったんだよ」
あれ? これはどちらかというと、桜城くん自身の意思? そして呼び方が……。
「それは、鬼人としての、ってこと?」
あ。
言ってから、しまったと思った。桜城くんには、黎が吸血鬼であると知っていること、話していないのに。



