黎が閉めた襖を見て、片目を細めた。 桜木真紅と、明らかに接触があったな……。 書き物用の机の引き出しから白い紙を取り出し、筆で書きつけた。 その紙に息を吹きかけると、白い蝶に変わる。 「御門の当主のもとへ。……急ぎ、頼んだぞ」 開けた窓から、白い蝶は飛び立った。 「主(あるじ)」 背後に顕現(けんげん)したのは、厳しい面持ちで見てくる、着物姿の男。 年の頃は四十あたりに見えるようだ。 白い蝶が飛び立った先を見つめている。 「うん。わかっておるよ、古雅(こが)」