「? なんでそんなこと?」 疑問符を浮かべた私に、黎は「ないならいい」と言って立ち上がった。 「彼氏役ぐらいならやってやる。ただ―― 「ほんとっ⁉」 「……そこまで驚かんでも」 「いや、だってもう逢わないとか言われてたから――また逢っても、突き放されるかな、って……」 あ、だめだ。こえが震えた。 涙が浮かんでしまいそうな目元を隠すように、顔を俯けた。 ぎゅっと目を瞑っていると、不機嫌でしかない声が降って来た。 「……その前に、一度その男友達、逢わせろ」