力の強い剛たちならともかく、和弘にはこういうことは似合わない。


実際に文子に追い詰められているし、逃げ足もきっと早くなかったのだろう。


それでも何か書かないといけないと思い込んでしまうなんて、あのサイトは人の性格まで変えてしまう効果があるのかもしれない。


「返して。あたしには行かなきゃいけないところがあるんだから」


文子が右手を伸ばしてそう言った。


和弘は渋々と言った様子で文子に鞄を返すと、そのまま逃げだしてしまった。


その後ろ姿を写真に収めたあたしは、すぐに書き込んだ。


《有木可奈からの暴露!


大山和弘は鞄を盗み切れずに逃走!》


「なんだったんだろうね」


弘江も飽きれた声を出している。


「あ、やばい」


そう呟いたのは文子だった。