「お前、もーちっと、胸があったらよかったな…」
「なっ?!」
「はっ。つーか。パンツ見えたっつーの、あれ嘘だから。まぁ、見えてもどうでもいいけどな。…色々気にし過ぎだろ、お前」
くくくっと笑った美希都に私は、腹が立ったのと悲しくなったので、気持ちがぐちゃぐちゃになる。
人は、極限まで感情が競り上がると、逆上よりも冷静になるらしい。
面白がるようにして、私の顔を覗き込もうとする美希都の顔を避け、とてつもなく低い一言を御見舞してやった。
「悪かったわね。自意識過剰で」
そして、美希都の前から踵を返す。
背後から、珍しく焦ったような美希都の声がする。
「なんだよ、…怒ってんの?」
「さぁ?」
「はっ。まるでガキだな」
「ねぇ?」
「あぁ?」
「邪魔するなら、出てってくんない?ウザい」
美希都に背を向けたまま、なんとか震える声を抑え込んで、そう言うと私はそのまま書庫に入って、内側から鍵を掛けた。
たった、15秒。
もしかしたら、それよりもっと短かったかもしれない。
だけど、幸せだと感じてしまった。
愛しいと感じてしまった。
それでも…この気持ちはもう仕舞おう。
そう思った瞬間でもあった。
美希都は、私を女だとは思ってない。
その事実をまざまざと突き付けられてしまったのだから…。



