この想いが届かなくても、君だけを好きでいさせて。

「俊介。お前、ちゃんと走ってるんだろうな」
「もちろんだ。毎日ベスト更新」
「嘘ばっかり」


稔が倒れてからベストを大幅に更新したけれど、毎日はさすがに言いすぎ。

私が突っこむと「黙っときゃわかんないのに」と俊介が不貞腐れるので、私も稔も噴き出した。


「けど、よかった。俊介のことだから、辞めると言い出すんじゃないかと思って」


なんて察しがいいんだろう。
ずっと一緒にいた稔にはなんでもお見通しなのかも。

一瞬、俊介の顔をチラッとうかがう。


「辞めるわけないだろ。インターハイ行かないと」


この発言が稔にとってどんなに酷なことか、たぶん俊介は理解している。

それでも、遠慮するのは親友ではないと思っているんだ。

俊介は退部を撤回したときに、稔といつかこういう会話をしなくちゃいけないと覚悟していたんだろう。


「しょうがないから応援してやる」
「当ったり前だ。グラウンドまで来いよ」