この想いが届かなくても、君だけを好きでいさせて。

稔は本気で俊介を拒否したわけではないし、俊介もそれがわかっている。

きっと『ごめん』のひと言で終わるはず。


「そう……だな」


俊介はうなずいた。



母が用意してくれたたくさんのゼリーをお土産に、ふたりで稔の家に向かう。

稔の部屋は2階だけど、階段の上り下りが危険だということで1階の洋室にベッドが移されていた。


「稔、お帰り」


おばさんに挨拶をしたあと部屋に顔を出すと、ベッドに横たわる稔の姿が目に飛びこんできた。


しばらく通院での放射線治療は続くそうだが、ずいぶん元気になっている。

無理をしない範囲でなんでもしていいと許可が出たらしいけど、今日はさすがに久々の移動で疲れたのかもしれない。


「里穂、来てくれてサンキュ」
「うん。退院おめでとう」


そう言ったあとうしろに視線を送ると、俊介も顔を出した。


「稔、退院おめでとう。あのときは、余計なこと言って——」
「悪かった」