この想いが届かなくても、君だけを好きでいさせて。

ドアの前に立ち、一度大きく深呼吸する。
そして口角を上げ笑顔を作ってからノックした。

——トントントン。


「稔。来たよ」


テンション高めに声を張り上げながらベッドに近づくと、彼は目だけを私のほうに向ける。


「ね。ゼリー買ってきたんだよ。食べて」


いつもは食べるかどうか尋ねるが、今日は絶対に食べてもらう気でいる。

点滴から最低限の栄養はとれるけど、それでは衰弱する。

稔に生きていてほしい。
ずっと笑っていてほしいから。


「いらない」
「ダメ。食べて。……彼女のお願い聞いてくれないの?」


そう言いつつも、心が悲鳴をあげていた。

俊介……。あなたが好き。
でも私にはこの選択しかできない。


「彼女って……?」


稔は唖然とした様子で私と視線を合わせる。


「あの、ね。ホントに私でいい?」
「それじゃ……」


稔の問いかけにうなずくと、彼に笑顔が戻りホッとした。