この想いが届かなくても、君だけを好きでいさせて。

どれだけからかわれても彼の言葉にはいつも愛情があったし、私はずっと彼に守られてきた。

私が困ると必ず俊介が現れて手を差し出してくれた。


穏やかな顔で寝息を立てる俊介の手にこっそり触れる。

私よりずっと大きくなった手は、いつも私の頭を撫でた。

それが子ども扱いされているようでいつも怒ってはいたけれど、彼に触れてもらえると安心する。


『俊介』


心の中で彼の名前を叫ぶ。

すると触れていた手がピクッと動いたので、慌てて離した。



翌日も俊介と一緒に病院へ向かい1階で別れたあと、私ひとりでエレベーターに乗って8階まで上がった。

すると、エレベーターホールの脇に置いてあるベンチでおばさんが呆然としている。


「おばさん、どうかされました? 疲れたのなら代わりますから……」


声をかけると、我に返った様子で私を見つめる。


「里穂ちゃん……。大丈夫よ」
「でも……」


なんだか様子が変だ。