この想いが届かなくても、君だけを好きでいさせて。

その返答には彼の悲しみや不安がこもっているようで、表情が曇る。

ダメだ。笑ってなくちゃ。


「それじゃあ、私とゼリーね」


笑顔を作り言うと、彼はやっと納得したのか手を離した。


それからエレベーターホールで、そろそろ戻ってくるはずのおばさんを待った。


「里穂ちゃん。毎日ごめんね」


着替えを持ったおばさんは、疲れているんだろう。
目の下にクマができている。


「おばさん、ごめんなさい。稔に病気のサイトを見せられて、違うって言えませんでした……」


深く頭を下げたが、おばさんに体を起こされた。


「そう。知ってしまったのね……」


おばさんはそれからしばらく黙り込み、言葉を探している。


「実は先生と話してたの。今は情報が氾濫していて、稔が自分の病について知るのは時間の問題だろう。でも、問題はそこから。生きる気力をなくしたら、ガンにあっという間に飲み込まれるって。気持ちがすごく大事だと」