稔は一旦私から視線を逸らし、枕元に置いてあったスマホを手にして操作し始める。

そして、とあるサイトを表示して、私に差し出した。


嘘……。

最上部に【びまん性橋膠腫】と書かれているので、声も出ない。

彼が患う“びまん性正中グリオーマ”のことだから。


「初期症状は内斜視が多い。手足に麻痺が出て歩行困難が起こる」


彼は淡々と語るけど、まさに稔の身に起こっていることなので、どう反応していいのかわからない。


「脳幹部にできる腫瘍のため、手術は不可能。抗がん剤が有効だというデータはなし。放射線治療のみが選択肢となるが、それも完治ではなく延命をするためのもので……一年後の生存率は五十パーセント」


彼は天井を見つめたまま、表情を一切変えることはない。
まるで感情のない人形のよう。

緊張のあまり呼吸が速くなる。