「また、来てくれる?」


その弱々しい発言にじわりと視界が滲んでくる。

告知はされていないとはいえ、ちょっとした病ではないことに気づいているのかもしれない。

面会謝絶なんて普通じゃないもの。


「だから、そんなに冷たくないって言ってるじゃん。イヤだと言っても毎日来るからよろしく」


俊介の言葉に合わせて私もうなずくと、稔はうれしそうに「おぉ」と白い歯を見せた。


病室を出てドアが閉まった瞬間、こらえきれなくなった涙が頬を伝って落ちていく。

するとそれに気づいた俊介が、シャツの袖で無造作に拭う。

そして、病院を出たところで「よく頑張った」と背中をトントンと叩いたので、涙が止まらなくなる。


「稔が笑ってくれるなら、なんだって……」


声がかすれて続かなかったものの、俊介はわかってくれた。


「アイツの笑顔は俺たちで守ろう。稔に命を吹き込むんだ」
「……うん」


いつの間にか雨が上がり、暑さは収まったものの湿気の高い空気が肌にまとわりついてくる。

私は空を見上げて、涙をぬぐった。