この想いが届かなくても、君だけを好きでいさせて。

「そんなことはいい。里穂もよく頑張った」


彼は私の肩を抱き寄せ励ましてくれる。


「稔、どうして……」


いったい彼の体になにが起こっているのだろう。


「ずっと調子が悪かったのかもしれない。稔の走りにキレがない気がしてた」


そんなふうに思っていたんだ。


「タイム、伸びてなかったかも」


涙声で私がつぶやくと、俊介はうなずく。


「もっと早く気づいてやるべきだった。俺が一番近くにいたのに」
「ううん。マネージャーなのに、気がつけな——」


勝手に涙があふれてきてあとが続かない。


「里穂のせいなんかじゃない。大丈夫だ。稔はすぐに戻ってくる」


俊介は自分にも言い聞かせるように語り、私の背中に手を回して抱きしめる。


「里穂はなんでも俺に吐き出せ。余計につらくなるから、ひとりで泣くな」
「俊介……」

「なんのために俺がいるんだ。お前が困れば俺が必ず助けるし、泣きたいときは胸くらい貸してやる」