この想いが届かなくても、君だけを好きでいさせて。

そんなこと言ったって……稔のことが心配でたまらない。


「俺たちが取り乱したら、おばさんはもっと混乱する。だから連絡があるまで待とう」


たしかに。こんなふうに倒れたりして……情けないのひと言。
でも、大きな体を痙攣させ反応のない稔を前にしたら、冷静ではいられなかった。


「帰れる?」
「……うん」


壁にかかる時計を見ると、二十一時。
一時間くらい意識がなかったようだ。

彼のお母さんがずっと待っていてくれたので、車に乗せてもらい帰ることにした。

病院から十五分。
私たち三人はひと言も話さなかった。

車内には、ただ重い空気が流れていた。


「おばさん、ありがとうございました」


家に着き、俊介のお母さんに頭を下げると、眉間にしわを寄せながら首を振る。


「稔くん、きっと大丈夫よ。元気出して、里穂ちゃん」
「……はい」


そう信じたい。


「俊介、いろいろありがとう」