この想いが届かなくても、君だけを好きでいさせて。

おばさんは泣き声交じりの声を振り絞る。

そういえば、ハードルもうまく跳べてない……。

そう思ったけれど、これ以上おばさんを動揺させたくなくて口をつぐんだ。


まさか、階段から落ちたときの後遺症? 
それとも、なにか別の原因があって、よく転ぶようになったの? 

どちらかわからない。


「稔! お願い、返事して!」


大きな声で懇願するも、彼の痙攣が止まらない。

そのとき、微かに救急車のサイレンが聞こえてきて、「呼んできます」と俊介が出ていった。



救急車を追いかけるように、俊介のお母さんに車を出してもらい、市民病院に向かった。

処置室の前で涙をこぼすおばさんの傍らで、必死に涙をこらえる。

私は励まさなくちゃ。


「おばさん、稔は大丈夫です。ずっと陸上で鍛えてきた丈夫な体を持ってるんだもの」


私がそう信じたかったのかもしれない。