この想いが届かなくても、君だけを好きでいさせて。

「稔、どうしたの! しっかりしなさい!」
「今、救急車を呼びましたから」


全身に鳥肌が立ち、怖くて怖くて呼吸が乱れてくる。

俊介がいてくれてよかった。
私だけだったらこんなに冷静に対処できない。

おばさんが稔を仰向けにしようとしたが、それを俊介が止める。


「動かさないほうがいいかもしれません」


おばさんは小さくうなずいているものの、涙がポロポロとこぼれだす。
それを見た私も、涙がにじんできてしまった。

俊介は稔の口元に耳を近づけ「息はしてる」とつぶやく。

でも、稔の顔は真っ白で血の気がない。


「稔……。稔!」


稔の名を呼び続けるおばさんに、俊介は口を開く。


「おばさん、稔の目が変だったの、気づいてましたか?」
「目?」
「はい。右目の黒目が中心に寄っていて」


俊介がそう告げたが、おばさんは首を振る。


「それは気づかなかった。でも少し前からなんでもないところでよく転んで……。この前も階段を五段くらい転げ落ちたから心配で」