この想いが届かなくても、君だけを好きでいさせて。

もちろん、スポーツ選手には伸び悩む時期がつきものなので、さほど気にはしてなかったけど、まさか、ずっと体調が悪かったということはないよね……。

ダメだ。
稔の右目が気になって、よくないことばかり考えてしまう。


大丈夫。
マラソンはいつもそんなに遅くなかったし。

心の中で自分に言い聞かせるも、もしかして体調がよかったらもっと速いのかもしれないなんて不安が残る。


「そっか。出られるかな、俺」


こんな弱気な稔を見たことがないので、緊張が走る。

成績が振るわないときも『次はベスト出す!』といつも前向きなのに。


どうしたの? 
体調の悪さを自覚してる?


「出られるに決まってるだろ。なに言ってんだ、お前」


俊介が強めにたしなめると、稔は「そうだよな」とつぶやいた。


「ま、練習さぼれば知らないけどね。早く治して復活しろよ」
「おぉ、そうする」


それからプリンを平らげた稔は、いいと言うのに帰る私たちを見送るらしい。