この想いが届かなくても、君だけを好きでいさせて。

まさか、病気がひどいわけじゃないよね……。

そんなふうに考えてしまうのは、右目がいっこうに元に戻らないからというのもある。


「明日、次の試合の申し込みがあるんだってさ。一一〇メートルハードルで申し込んでおくぞ。あっ、四〇〇も出る?」
「お前、俺が長距離苦手だと知ってて言ってるだろ」
「バレた?」


俊介と稔は顔を見合わせてクスクス笑っている。


「次の試合っていつの試合のことだっけ?」
「えーっと、七月の大会かな」


今年のインターハイ予選は残念ながらふたりとも敗退している。

しかし、まだ一年生なんだから難しいことはわかっていたので落ち込んではいない。

そんなことを考えていて、ふと気がついた。


俊介は高校に入ってからタイムを伸ばしているけど、そういえば稔は少しも伸びていない。

それどころかベストに遠く及ばないこともあるし、最近はハードルを倒す回数も増えているような。