この想いが届かなくても、君だけを好きでいさせて。

だって、ずっと好きだったんだもの。
俊介のことだけを。


「里穂」


もう一度繰り返す彼は、数歩足を前に進めて私の目の前までやってくる。

視界に彼の赤いスニーカーが入るだけで、胸が張りさけそうに痛い。

肩に手が触れたので驚いて顔を上げると、熱のこもった視線と絡まりそらせなくなる。


「里穂、俺……」


彼はそう口にしたけれど、それから先は言わなかった。

ただ、悔しそうに唇を噛みしめて顔をゆがめるだけ。


なにを言おうとしたのかわからないまま、時は過ぎていく。

俊介の瞳に私が映っているのを見つけてしまい、ますます苦しくなる。


本当はずっと映っていたかった。

でも、稔から離れるわけにはいかない。
そんな選択、私にはできない。

俊介は肩に置いた手に力を込め、なぜか私を抱きよせる。


「稔を、頼む」


そしてどこか悲しげな彼の声が聞こえたとき、私の初恋は完全に終わりを迎えた。