この想いが届かなくても、君だけを好きでいさせて。

じりじりと獲物を追いつめるような鋭い質問が突きささる。


「……うん」


鼓動が速まりすぎて息が苦しい。

私がどうして稔の告白を受けいれたのか、気づいているのかもしれない。

でも、それでは困る。
稔に恋愛感情を持っていないことを知られてはいけないんだ。

追いつめられている彼をこれ以上落胆させられない。
お願い、黙って見守って。


俊介はそれからしばらくなにも言わない。

今、なにを考えているの?

好きなの。俊介が好き。
だけど、このあふれそうな気持ちを伝えるわけにはいかない。

稔のことだけを考えなくちゃ。
彼は今この瞬間も苦しんでるんだから。


大好きな人に、他の人と付き合うと告げなければならない事実にいたたまれなくなって、顔を上げることができない。


「里穂」


それからどれくらい経ったのか。
俊介の優しい声が耳に届いた。

それでもうつむいたまま、返事もしなかった。
俊介の顔を見たら気持ちが揺らぎそうだから。