この想いが届かなくても、君だけを好きでいさせて。

俊介のことが、好き、なのに……。

でも、どうしても稔を放っておけない。


「初耳だけど?」


ようやく私から手を離した俊介は、背を向けたままつぶやく。


「うん。ごめん」
「謝ってほしいわけじゃない」


そう、だよね。

隠し事をしないからこそ仲良かった私たち。

それなのに、彼に初めて言えないことができて……それがあんな形で伝わったから怒っているんだ。


「……うん」


そこでようやく俊介が振りむいた。

私を見つめる眼差しはまっすぐで、なぜか悲しみを含んでいるように感じる。


「里穂は、稔が好きなの?」


そう聞かれても本当のことを言えるわけがない。返答に困って即座に反応できなかった。

稔のことは親友として好きだった。だけど、それは“男の子として”ではなかったから。

私が好きなのは、俊介なの。


「あっ、あの……」
「おとといって、稔が自分の病気について知った日だよね」