この想いが届かなくても、君だけを好きでいさせて。

おばさんの話では、元気なら外出してもかまわないし、好きなことはどんどんさせるようにと医師から言われているらしい。

それが余命の短さを示されているようで心苦しくもあったけれど、1分1秒でも長く稔には笑顔でいてほしい。


「ありがとう。明日、体調がよければ少し出かけよう」
「うん」


私が笑みを浮かべて返事をすると、彼も白い歯を見せた。



稔の笑顔が見られたという高揚した気持ちと、俊介に知られたという落胆した気持ちの両方を抱えながら家へと帰る。

これから俊介とどう接したらいいんだろう。


「里穂」
「あ……」


すると、玄関の前で俊介が待ちかまえていた。


「こっち」


彼は有無を言わせず強い力で私の腕を引き、思い出の公園へと向かう。

いつもとは違う荒っぽい行動に少し驚く。

怒ってる?


「痛いよ」


あざができそうなほど強く握られた手首が痛くてそう言ったけど、それより心のほうが悲鳴をあげていた。