この想いが届かなくても、君だけを好きでいさせて。

覚悟していたことだけど、俊介が手の届かない遠いところに行ってしまうようで悲しい。

でも、そんな言葉を口にするのは許されない。


俊介が出ていくと、稔が口を開く。


「言ってなかったんだ」

「ごめん。だって、ずっと3人でこうしてきたでしょ? やっぱり恥ずかしいじゃない」


必死に言い訳をしている自分に気がつき、俊介への気持ちを再確認する。

できるなら知られたくなかった。
俊介の前では親友で通したかった。

ずいぶん勝手でひどい言い分だとわかっていても。


「まあ、そうだよね」


稔は一瞬表情を曇らせたけれど、すぐに笑顔に戻った。

私はこの笑顔を守るんだ。
それが、唯一稔のためにできることなんだから。

……たとえ自分の心の中が土砂降りだったとしても。



それから20分ほど他愛もない会話を楽しんで、稔が疲れるといけないので帰ることにした。


「それじゃ、また明日ね」
「里穂。デートしよう」
「デート?」