この想いが届かなくても、君だけを好きでいさせて。

「俺は堂々とふた股なんてしないって」
「ふた股? えっ、彼女いるの?」


俊介の様子に稔が驚いている。
私が俊介に報告していると思っているんだろう。


「俊介、聞いてないの?」
「ごめん。なんとなく照れくさくて、言いそびれちゃって」


私が引きつった笑顔で口を挟むと、俊介の動きが止まった。

俊介は私を見つめたまま口を開こうとしない。

たった何秒かのことだったけど、私にはとてつもなく長く感じた。


バレて、しまった。

こんなに近くにいるんだから、すぐに知られるとわかっていたけど、想像以上にきつい。
胸が張りさけそう。


「里穂、なの?」


うなずかなくちゃいけないのに、頭が真っ白になってできない。

すると稔が「そうだよ」と代わりに答える。


「そっか。知らなかった。へぇー、いつから?」


俊介の声が上ずっているように聞こえるのは気のせい?

動揺しちゃダメ。
稔のことだけ考えるの。

私は必死に自分に言いきかせる。