寒さと硬さを全身で受け、ライラはおもむろに目を開けた。薬で無理矢理意識を飛ばされたので、すっきりな目覚めとはいかない。意識も朦朧としている。

 それでも体に力を入れ、よろよろと身を起こせば、頭が鉛のように重たく、思わず苦悶の表情を浮かべた。

 手はうしろでひとまとめに縄で縛られており、自由がきかない。

 ここは、どこなの?

 恐怖に支配されそうになるのを抑え込み、必死に頭を回転させる。剥き出しの石畳はひんやりとした空気を伝え、部屋と呼ぶより物置に近い狭さだ。

 閉塞感に息が詰まりそうになる。

 ライラの下には高価そうな絨緞か敷かれている。色彩豊かで繊細な模様とふかふかな触り心地はなにかの動物の毛皮か。

 この部屋とのアンバランスさに、自分と共に持ち込まれたものだと推測する。

 窓と呼ぶには心許ない小さな穴からわずかに光が差し込む。部屋の中は暗いが、まだ日は沈んでいないようだ。立ち上がって窓を覗き込もうとしたライラだが、不意に部屋のドアが開かれた。

 驚きで肩をすくめていると、ある人物が顔を出す。

「やぁ、お目覚めかな?」

 にこやかな笑顔は、初めて会ったときと変わらない。しかし今は状況が状況だ。

「あなた……」

 ライラは大きく目を見開いた。現れたのはユルゲン・フルヒトザーム。スヴェンの母方の従兄でライラとの面識は一度きりの男だ。