「会長、マイクチェックお願いします。


私、スポットライトの確認に行くので」



本当は夏休みの間に終わらせておきたかったのだが、講堂は吹奏楽部の公演に使われていて、最後までチェックができなかった。



「逆にしよう。俺、マイクで話したくないよ」



若干恥ずかしがり屋の伊織は嫌だと拒否する。



「わかりました。


ではスポットライトお願いします。全部で4箇所あるので全部お願いしますね」


「はーい」


そう言って伊織はとことこと2階に向かっていった。


私は分厚いファイルを胸に抱いて音響設備に向かう。


舞台に登って袖に入ると、放送室の扉を開ける。


色々スイッチを押して、設備の確認をしていく。


『マイクチェック、マイクチェック。

音響設備の確認作業をしています。急に大きな音が流れるかもしれませんが、ご容赦ください』


そう言って1つひとつ機材の確認をする。




ふとした瞬間に思う。


気づいたら伊織のことを考えていて、


思い浮かぶのは、可愛い寝言だったり、寝ぼけて抱きついてきたり、


…本気で走るかっこいい伊織。



どうして伊織のことをこんなにも好きになってしまったのか。